■あらすじ ※あらすじは松竹HPよりコピーしています
源頼光の館では病に伏せる源頼光を守護して坂田金時と碓井貞光が宿直(とのい)をしています。そこに頼光の命を狙う女郎蜘蛛の精が、お茶を運ぶ女童、薬売り、番頭新造、仙台浄瑠璃を語る座頭、と次々に姿を変えて現れ、ついには傾城薄雲太夫となって頼光の寝所に忍び入ります。宿直の二人が詰め寄ると、千筋の糸を投げかけ、姿を消すので、頼光らは後を追います。
能の『土蜘』を題材とした変化舞踊の一つで、古風でありながらも視覚的な面白さを充分に堪能できる作品です。亀治郎が鮮やかな六変化を見せ、勘太郎の頼光に相対します。花形七人が勢揃いして賑やかな打ち出しとなります。
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変化舞踊の代表格みたいな『蜘』ものです
芝居中に『ちちゅう』という言葉がよく出てきますがこれは蜘を意味していて、『蜘』という字を解体すると、『虫(ちゅう)』と『知(ち)』ですので、蜘のことを『ちちゅう』と言ったりするのです
今回の蜘は亀治郎(以下亀ちゃん)演じる女郎蜘蛛ですが、よくお目にかかる『土蜘』では化身の僧侶の名前が『ちちゅう(漢字忘れた・汗)』ですから、最初から『わたくし、じつは蜘の妖怪なんですよ~』と自己紹介しているのと同じです。いかにも歌舞伎らしいのですが(爆)
それと、花道七三(七三=揚幕から七分、舞台から三分の意味)にスッポンという穴が切ってあり、ここからせり上がって登場したり、引っ込んだりするのは、妖怪・妖術使い・亡霊・獣(動物の類)と決まっており、どんなに美しい格好の娘でも、このスッポンから出入りすれば、この世のものではないというお約束事です
三色の定式幕が開いたときに、舞台装置の一部として吊り下げられている幕をチョンパーといいまして、色つき無地の時もあれば模様入りの場合もあります。今回は大胆で斬新な蜘の巣を連想させるデザインでたいへん美しいものでした。こういう幕は初めて見たような気がするのですが、猿之助さんの舞台ではあったように思います。今回は若者たちのアイデアなんでしょうかね。とても良いと思いました。尚、この幕は直ぐに切って落とされ片付けられてしまいます。析(き)がチョンと入ったら、パッと振り落とされて片付けてしまうので「チョンパー」というわけです
結局なんだかんだ言いながら、今ノリノリの亀ちゃんが一番美味しいところをかっさらっていきました(笑)。息をつかさぬ早変わりは見事でみなさん大喜び。それに何といっても巧かったですねぇ。出入りもスッポンのみならず、上手に設えた常磐津連中の蛸足見台をよけたら下に穴が切ってあってそこへ飛び込んだり、上からぶら下がった縄(蜘の糸のつもり)に吊り上げられたりと大暴れでケレン味たっぷりの楽しい舞台でした
何度目かの出で花道に灯りが入ったので、見物はほとんど全員が後ろを振り向き、花道奥の揚幕を注目していたのですが、義経千本桜川連法眼館での狐忠信の出と雰囲気が似ていたので、私は「これはやるつもりだな・・・」と思い、舞台正面を見ていましたら、案の定、正面階段の隙間から亀ちゃんが転がり出てきました。想像通りでしたのでちょっとニヤニヤしてしまいました(笑)
妖怪変化ものなどで、芝居の最後の最後に荒事の『押戻(おしもどし)』というのが付く時がありまして、今回はこの『押戻』がありました。愛之助が演じました。より一層派手やかに豪華にしたい時にはこういうことをするのですが、この『押戻』をどう説明して良いやらちょっと困ってしまうのですが・・・
荒れ狂って大暴れの妖怪が花道へ逃げようとするのを、正義の味方よろしくスーパーマン的に極彩色で現れて、超人的な力で妖怪を本舞台に『押し戻して』鎮め、ついでに場内が沸くような面白いセリフを言ったりするのです
今回の押戻は小道具を持っていませんでしたが、たまに身長ぐらいある太い青竹を持っていたり巨大な鯉を脇にかかえてたりしますが、これは地面に広く根を張る青竹を素手で引き抜く、或いは巨大鯉を捕まえられるのは超人の証しであろう、というような意味合いです。まぁ荒唐無稽な話ですが、江戸時代の人はこういうことを面白がったんでしょうね
華やかさを全て集めたような舞台でとても良かったです
若いって素晴らしい。所作台を踏む音がまるで違いました。元気いっぱいです♪
劇場全体が揺れているようでした。というより実際揺れていました(笑)
今どきの若者、なかなかやります
機会がありましたら舞台の彼らをぜひご覧になってください
- 菊
- 2009/02/07 (Sat) 16:50:37